映画「チィファの手紙」公式サイト » INTRODUCTION

2020年1月に公開された岩井俊二監督の『ラストレター』。「手紙」をモチーフに、懐かしさと新しさを同時に兼ね備えた芳醇な映画世界は多くの人の心を潤した。あの物語が、今度は中国を舞台に繰り広げられる。『チィファの手紙』は、『ラヴソング』で知られる名匠ピーター・チャン監督をプロデュースに迎え、岩井監督が自らメガホンをとった一作。だが、セルフリメイクという表現は当たらない。撮影は、日本の『ラストレター』に先駆けて行われ、中国での公開も2018年。つまり、『チィファ』のほうが「お姉さん」なのである。

ある同窓会が中学時代の恋をよみがえらせる。30年ぶりに再会した女性と男性。女性は亡き姉のふりをし、男性はかつてその姉に恋をしていた。そして、妹は彼のことが好きだった。中核が不在のままのトライアングルは、やがて始まるふたりの「文通」によって思いもかけない拡がりを見せ、あるひとつの奇跡へと辿り着く。

ひとりの女性の死が、残された人々にもたらす影響。だが、それは必ずしも、悲しみばかりではない。妹は、恋人は、そして子供たちは、その死によって、めぐり逢い、かけがえのない時間をともに分かち合うのだ。

岩井俊二にしか物語ることのできないオリジナルストーリーのありようは中国版でも基本的に変わらない。だが、岩井が執筆した小説「ラストレター」と映画『ラストレター』の味わいが大きく違っていたように、『チィファの手紙』も独自の芳香が薫りたつ。

夏休みの設定が冬休みになり、中国の風土と中国人キャストの演技が積み重なることで、同じはずの物語がまったく異なる趣に。糸電話の導入という細部から、最終盤の夜間長回し撮影によるドラマティックなエモーション創出に至るまで、大小さまざまな差異が、豊かに響きあう。

『ラストレター』が軽やかでさわやかな後口だったとすれば、『チィファの手紙』はしっとりしみじみとした余韻。脚本と小説を「母親」と捉えるなら、中国、日本の映画二篇はまるで、対照的な性格の「双子の姉妹」のよう。

この秋、わたしたちは、「もうひとつの感動」に出逢うことになる。